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しもつけウォールストリート物語

  しもつけウォールストリート物語


JR自治医大駅周辺には、自治医大誘致と呼応して開発された広大な住宅地が広がる。昨年は駅から徒歩5分に下野市役所がオープンした。
 自治医大駅は、大学病院、高級住宅地、市役所の3つを抱えるのだから、さぞかし活気にあふれていると想像する。大学病院も市役所も徒歩圏内だから、歩いて行く人も多いだろう。途中の商店はさぞ繁盛するだろうと思うのが普通だ。

 ところが、電車を降りて周りを眺めると、何となくすさんだ雰囲気がする。大学病院まで歩くには適度な距離なのだが、歩く気になれない。ぶらりと歩いてみたくなるような雰囲気ではないのである。なぜか歩くのがいやになる。

すさんだ雰囲気といっても、建物が朽ちて荒れているわけではない。
駅の東西にはエレベーターもある。お陰で街を分けるJR線の東西を、自転車で通り抜けることができる。
東口(自治医大口)には昇りエスカレーターがあって常に動いている。駅構内はきちんと清掃はされている。駅を離れても、ごみが散乱しているわけではない。
自転車がそこかしこに放置されているわけでもない。東口には2階建てスロープ付きの大きな有料駐輪場(写真1)がある。2階から駅改札口まで直結する通路までできていて、2階に駐輪しても1階まで降りずに改札口まで行けるようになっている。西口(市役所口)には歩道に沿って、無料駐輪スペースが確保されている。
東口を出れば、公衆トイレもありきちんと清掃もされている(写真2)。歩行者用道路の一角には大理石造りの立派なモニュメント「天平の空」がある(写真3)。歩道の真ん中に立派な木製のベンチまである(写真4)。
西口(市役所口)ロータリーは真新しく、その真ん中には立派な石造りの馬形埴輪の像が並んでいる(写真5)。
点数を付ければ、むしろ予算をふんだんに使いきちんと整備されており、どちらかと言えばサービス過剰と言った方がよい。

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        写真1.東口にある駐輪場



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       写真2.公衆トイレ



    
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       写真3.天平の空のモニュメント



    
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     写真4.歩行者通路の真ん中にあるベンチ 



     
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      写真5.甲塚古墳出土馬形埴輪像 

 上は遠景。西口ロータリーにある馬形埴輪のオブジェは背景に沈んで目立たない。下は近景。下野市教育委員会の解説が向かい側の歩道にある。それによると、甲塚古墳から4対の馬形埴輪が出土した。このオブジェは彫刻家 大栗克博氏が実物大で製作したもの。

 
きちんと整備されているのにすさんだ雰囲気がする。何故なのだろう。
何と言おうか、生活感がない、人間臭さがない、教科書的、効率優先、計算高い…。それらを一言で言えば、人に対するやさしさを感じさせないのである。
 改札は機械、駅員がいても用がない限り顔を見せない。切符の販売も機械がやる(写真6)。駅には売店がない(写真7)。飲み物、新聞は自動販売機が売る。駅周辺にも売店はおろか、どこにでもあるはずのコンビニすらない。

人間だから、出かけてからハンカチや筆記用具などちょっとした忘れ物に気付くことはよくある。駅の売店で買えば事足りるのだが、自治医大駅には、そのやさしさが欠ける。

西口に通じる通路正面の掲示板には何の掲示もなく、広告を募集する小さな張り紙があるだけである。掲示面も劣化して薄汚れている(写真8)。
 東口エスカレーターの上り口にも掲示板がある(写真9)。右側の大きな広告部分はじっくり立ち止まって見ることができるが、まちのおしらせの部分は、特に左側にはられた場合はエスカレーターが止まってくれないので、読み落としたら上まで上がって、階段で降りてきて、もう一度エスカレーターに乗って、構えて読まなければならない。読み残しがあれば、何度でも繰りかえさなければならない。
 誰もが気づくことであるが、誰も苦情を訴えないから、こんな異様な掲示板が存在し続ける。駅利用者は、異様な感覚の人たちと関わってもしょうがないとあきらめているのであろう。
    

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     写真6.切符の販売は機械がする

    
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     写真7.駅の売店は物置になった
     飲み物、新聞、証明写真は機械が売る。

    
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      写真8.西口側掲示版
      小さな張り紙は有料ポスターを募集している。



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     写真9.東口側掲示板
   混雑時にはまちのおしらせを立ち止まって読むことができない。


 駅を降りてやたらと目に付くのがである。
東口正面にでんと構えるのが2階建ての大きな本屋の裏である(写真10)。本屋の入口と駐車場は、駅とは反対側にあり、駅側と両サイドはになっている。詳しくいうと、駅前ロータリーに面した部分は本屋の裏であり、ロータリーに通じる大通りと自治医大に向かう近道は、共に片側は本屋のがそびえている(写真11、12)。ロータリー側にかろうじて本屋の通用口があるが、あくまで裏口であって、申し訳程度に小さい(写真13)。

 駅を出て本屋とその駐車場を越えると、次のブロックにもがそびえる。スーパーマーケットの壁である。本屋と同じように、玄関と駐車場は駅とは反対側にあり、大通りと小道の両サイドは壁になっている(写真14、15)。大通りに歩道を越えてトラックが進入できる搬入口があるが、それ以外は壁である。スーパーの駅側は廃業した医院や月極め駐車場になっている。
 大通りの歩道はゆったりしていて歩きやすいが、商店が並んでいるのではなく、人を拒絶するような壁があっては、すさんだ雰囲気を感じさせるのは当然である。
 ニューヨークに金融の中心として有名なウォールストリートがある。入植初期に原住民区域と入植区域とを分ける大きな壁があったことからこの名前が付けられた。日本語で言うなら「壁通り」ということになる。
 自治医大駅周辺にも壁通りがある。モダンに「しもつけウォールストリート」と呼ぶことにしよう。ニューヨークのウォールストリートはかつてあった壁にちなんだ名前であるが、「しもつけウォールストリート」は今も現に壁がそびえている。

「壁」といえば、ベルリンの壁も刑務所の壁も、人を拒絶するものである。自治医大駅周辺の壁は、本屋の壁もスーパーの壁も、歩行者にやさしく微笑みかけるものではなく、「買い物をしない歩行者には用はない!近付くな!」と言っている。まさに人を排除するもので気分が悪い。これが、自治医大周辺をすさんだ雰囲気にしている大きな原因である。


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      写真10.本屋の壁、駅側

    
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      写真11.本屋の壁、大通り側

    
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       写真12.本屋の壁、小道側


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    写真13.本屋の裏(駅側)にある通用口 
     壁の右側、看板の下



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      写真14.スーパーの壁、大通り側
      正面に見えるのはJR自治医大駅


    
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     写真15.スーパーの壁、小道側


 この他にも自治医大駅周辺には、人間の営みを拒絶するような興ざめするものが目立つ。
 駐輪にもってこいの本屋の大通り側壁の前のスペースには、柵があって駐輪禁止の掲示がある(写真16)。駅のすぐ前で、スペースが開いていて何にも使われていない。何故こんな嫌がらせをするのだろう。景観を損ねるというなら、西口駐輪場も廃止しなければならないことになる。

 東口から駅を望むと、駅2階から左側に大陸橋が見える(写真17)。この建造物は単に駐輪場2階に自転車を置いた人が、2階から駅改札まで直接行けるだけのものだ。なくても通路を通って駐輪場から駅まで難なく行ける(写真18)。2階に駐輪した人だけのちょっとの近道を提供するだけのために、こんな建造物をつくった。余程おカネを使いたかったのであろう。


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       写真16.駐輪禁止の掲示
       本屋の壁の大通り側の一部

    
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       写真17.大陸橋
バス乗り場の後ろはエレベーター。その左に見えるのが、駐輪場2階に続く連絡橋。

    
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       写真18.大陸橋下の通路


東口モニュメント「天空の空」には人が入って見物したり、くつろいでいる姿を見たことがない。見ただけで冷たく感じさせ人を寄せ付けないのだ(写真19、20)。そのすぐ近くの歩道の真ん中に立派な木製のベンチがあるのだが、前も後ろも通行人が通る中で、落ち着いて休憩できるわけがない。ベンチは通行人を眺める位置に設置するものである。雨よけも日よけもないのは、天平の空と同じだ(写真4)。

      
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          写真19.天平の空、階段をのぼる
    


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   写真20.天平の空にある台
これはベンチか、荷物を置くための台か、それともこの上に立って空をみるためのものか。



 歩道の脇に、車道との境界を区切るために街路のつつじがある。本屋の裏口前には、つつじだけではなく、頑丈な柵がある。
 本屋の裏口から駅に行くのに、つつじを越えればロータリーを突っ切ってショートカットできる。越えなければロータリーを半周歩かなければならない。乗り越える人が多いので、けもの道のように通路が出来上がっていた。
 それが気に入らない人たちが、ロープを張ったり、柵を立てて通行できないように邪魔をしたのだが、ロータリー半周するのがいやな人たちがそれをものともせず、ロープも柵も乗り越え通行を続けた。
 規律正しい人たちはそれが許せず、とうとう絶対に乗り越えられないような高い柵を設置した(写真21)。ロータリー半周するのがいやな人たちは、あきらめたのだろうか。
 いやいや、柵のないところに新たな通り道をつくってしまった(写真22)。
 アタマにきた頭の硬い人たちは、ついに長い柵、しかも蹴飛ばしてもびくともしない頑丈な柵を設置した(写真21、22)。
 遠回りがいやな人たちは、頑なに主張し続ける。頑丈な柵も、高い柵もロープも越えて抵抗を続けている。攻防戦は数年続いているが、果たしてどちらが先にあきらめるだろうか。
 今後が楽しみだが、そんなことよりも、ロータリーを突っ切って横断歩道と歩行路をつくってしまえばよいことではないのだろうか。白いペンキ代は頑丈な柵をつくるよりも安上がりだろう。


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        写真21.けもの道

    
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        写真22.新たなけもの道


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      写真23.スーパーの横にもけもの道



駅からスーパーに行くには、反対側の玄関に回らなければならない。大通り側から行けば曲がってすぐに玄関にたどり着く。ところが、小道側から行くと、屋上駐車場まで車を誘導するための分離のつつじがあって、大回りしなければならない。つつじと低い壁を乗り越えれば近道だから、ここにも通路が出来上がっている(写真23)。

どうやら自治医大駅周辺は、車社会に合わせて設計されていて、歩行者の動線に反する街づくりだ。
 やさしさがないのは、街づくりの底に見える基本理念から来る。駅までの行き来は車で送迎してもらい、駅近辺は素通りせよ! 駅周辺をうろつくな! 買い物は車でスーパーに行け、街を歩き回るな! 本屋にも車で行けという基本設計なのである。

 世は車社会だといえども、車のない人もいる。大学病院や市役所に行くには、駐車場が混雑していたり、用がなければ駐車料金をとられる。JRの駅から徒歩数分の距離だから、簡単にJRにアクセスできる人にとっては、JRが便利なはずである。

ロータリーや短時間駐車スペースなど、車にはやさしいが人には冷たい。歩行者に対するちょっとした気配り、やさしさがない。
 立派な冷たいモニュメントがあっても、座れるようなベンチはないし、日よけなし、屋根なしだ。バス乗り場、タクシー乗り場には小さな屋根があるものの、駅を出るとすぐ目の前にあるにも関わらず、雨の日はたどり着くのに傘をささなければならない。

 東口モニュメントも西口モニュメントも、地域の歴史遺産をアピールしたいのだろうが、住民や駅利用者にとっては、役にたたないだけでなく返って邪魔になる。
 東口は「天平の空」と掲げ、わざわざ空が見えるようにしたから、雨除けにも日よけにもならない。
 西口ロータリーは、昨年市役所オープンに合わせて、市役所の玄関にふさわしく模様替えし全面的に改修された。歩道の石畳も上質のものに変えられた。
 ロータリー中央は石づくりで豪華に整備され、馬形埴輪のモニュメントが並べられた。ところが、ロータリーの真ん中にあるから、近くまで行って間近に見るようには出来ていない。

 公衆トイレはあっても、歩きながら一休みできるベンチがない。気軽に休憩できそうな店もない。これでは、大学病院まで散歩がてらブラブラ歩いてみようという気にはならない。短い距離にも関わらず人はバスに乗って、街を素通りする。
個性的な小規模商店には客が来ず、シャッターを下ろす、街はますます寂れていく。



 ではどうすればよいのか。
 新たに大規模店を誘致すれば、街が活気付くというのは、大規模店の台詞である。大規模店が増えれば、魅力ある小規模店が育たず、街に魅力はなくなる。自治医大駅周辺を、歩いてみたくなるような魅力ある街にしたい。

 まず、東西両モニュメントは地域づくりに役立っているとは思えない。東口モニュメントは街を冷たくするので取っ払って広場にする。人通りの多いところに、広場があれば、それだけで自然に利用する人が出てくる。誰もが利用できれば、ストリートパフォーマンスや屋台ができ、さらに人が集まり、待ち合わせにも利用するようになる。
 素通りする通行人ではなく、人が集まれば木製のベンチが役に立つようになる。小さな東屋ができればなおよい。予算はいらない。小さな広告を許可すれば提供企業は沢山出てくる。県や市が規制しなければよいだけである。

  西口モニュメントは博物館に持って行き、車の一時待機スペースにでもすればよいと思うが、移動させ整備するにもカネがかかりそうである。待ち合わせの場になるように横断歩道を設置し、車両通行スペースを少し削ってでも、見物スペースや東屋を設置するなどしてはどうだろうか。

かなり特徴あるモニュメントだから、建設に至ったいきさつなどを展示する必要もあるだろう。

 壁については企業のものだからどうしようもない。
 出来上がる前なら設計見直しを訴えることも出来た。出来上がった壁は、簡単には取り払えない。建て直すとなると、膨大な費用がかさみ、誰も負担するわけがない。
 壊せないなら利用しよう。壁にそったスペースを利用して、フリーマーケットや朝市をやる。幅のせまい出店(でみせ)や屋台がきちんと運営され、やがて発展して常設になれば、街には活気が戻る。

  最初は週1回の定期開催からスタートし、徐々に規模を拡大し、週2回にするなど頻度を増やし、いずれは、毎日開催、駅から自治医大まで、いつでもフリーマーケットをやっているとなれば、それが街の看板になって人が集まる。

 フリーマーケットへの出店希望者は多い。店舗要らず、資金要らずなので、本格開業の準備としてもってこいである。そこで試しにやってみて自信を得たら、この街で店を構えてもらえるようになる。昔からものを売る商売は、露天や市からスタートした。歴史ある老舗商店の多くもそうである。
 フリーマーケットや市、出店(でみせ)、屋台には、地域活性化のために地域の露天商や、近隣の農業生産者にも出店協力を仰ぎたい。

2016.3.3 スピノザまだまだ
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市民の無関心が街をだめにする

市民が街づくりに関心がなくなると、街は利権の配分に利用され、食い尽くされて朽ちていく。そのことがよくわかる記事ですね。
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