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『障害者』 後藤安彦/文 貝原浩/絵 現代書館1995年☆☆☆☆

 『障害者』

  後藤安彦/文 貝原浩/絵

  現代書館1995年 1200円+税

  ☆☆☆☆

 

現代書館 FOR BIGINNERSシリーズの73番目。

このシリーズは、講習会のテキストか、教科書や参考書のような体裁をしているが、この本に限っては一般向きにタイトルと表紙を変え、書店の注目の本コーナーにでも堂々と並べて欲しいと思った。

26年も前に出版されたものだが、今読んでも新鮮である。我々の障害者を見る目は、四半世紀経っても変わっていないということかもしれない。

 著者は1929年生まれ、戦争中脳性麻痺で中学校へ入れず在宅生活が始まった。1959年30歳のときに、ようやく家族から離れ、東京の国立身体障害者センターに入所した。その後、和文タイプと翻訳の仕事をしながら、障害者運動に携わってきた。

活動が目指してきたのは、障害者が家族や施設に囲われるのではなく、独立して生活することであった。その主張は一貫している。

 この本では著者の分身が主人公となって、生活の中で体験した事件やエピソードを紹介しながら、著者の考えが述べられる。家族や友人などの人物がたくさん登場し、社会生活とは人とのふれあいだということに気付く。障害のある当事者の目線で語られているので、新鮮なのかもしれない。

 読んでいくうちに、社会が障害者をどのように扱ってきたか、その歴史が自然にわかる。

 障害者を隔離して教育するのは間違っていた。世界中が分離教育を反省し、障害があってもなくても一緒に教育するようになってきたにもかかわらず、日本は、なおも分離教育をやっている。反対運動がくり返されてきたが、文科省の方針は変わらなかった。

日本国憲法26条は、「日本国民は勤労の権利を有し義務を負う」となっている。働くことは、権利なのか義務なのか?

障害者も働く義務があるから、つべこべ文句言ってないで、働けるように施設に入ってリハビリに励め、と言うのだろうか。

日本国憲法は、国民主権をかかげ、国民の権利を擁護するために国家の暴走を防ぐものと思っていたが、国家が国民をしばる文言が残っていた。これまで気付かないでいたことにおどろいた。

 

 一人の若い障害者の言葉が、読後もずっと残っている。

「障害者の肉親は、障害者の第一の敵だ!」

著者によると、特にエライお母さんがダメだそうだ。これは愛情に欠けるという問題ではない。

世間から理想的とされるような立派な母親は、良かれと思って障害者が困ることがないように、手取り足取り指図する。子どもを囲い込んで、何事も母親が決めてしまう。子どもは自分で考えるチャンスを奪われ、いつまでも自律できないということになる。

 

この本の圧巻は最後のまとめの章だ。主人公は障害者運動の集会での講演をした。そこでは、障害者が障害者らしく、おとなしく楽に生きる心得12条を披露した。これらは著者の主張とは正反対である。国や施設が何を言っているのかを逆説的にわかってもらおうとしたのだ。

12条を障害者の視点に変え、わかりやすくして紹介しよう。

 

1.       家から出ない

2.       本を読まない

3.       友だちをつくらない

4.       異性に近付かない

5.       考えない

6.       電車に乗らない

7.       障害児学級に進んで入る

8.       リハビリや手術等、医者が勧めるものに進んで応じる

9.       自分には何もできないと思う

10. 集会に参加しない。仲間をつくらない。

11. 障害者どうしでランク付けし、自分より障害が強い人を見つけて安心する。

12. 進んで施設に入る

 

本を読んだり、友だちをつくると、よからぬ影響を受ける。異性は欲求を呼び起こし、思い切った行動に走るから危険だ。電車に乗って遠出すると、視野が広まり、変な考えを起こす。

要するに、社会や人との接触を避け、隔離施設に入所するのがよいのだ。現状に満足して言われるがままにするのがよい、ということだ。

なるほど、12か条を守れば、波風が立つことなく、本人も家族も施設も、平和で安泰で、困ることはない。国も施設も守ってくれる。

しかし、人間としてもっとも大切なものが欠けている。これでは、障害者は人間でなく、飼いならされたペットか家畜である。

 

女性の受講者が、「男性中心社会では同じことを女性に言ってますね」と言った。男性中心社会は女性を囲い込んで、男性たちの都合の良いように飼育してきた。

女性に限らず古今東西、奴隷を大人しくさせるときも、ブラック企業が社員をこき使うときも、中高一貫の受験校も、文科省や厚労省の一部でも人間をうまく調教して、文句をいわず都合よく動くロボットのように仕立て上げている。油断すると、人間は現代社会のペットか家畜にされてしまうということだ。

そんな中でも、障害者はもっとも危うい状況にあるといえるだろう。

 

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