FC2ブログ

『人権考――心開くとき――』 産経新聞大阪本社人権問題取材班編☆☆☆☆☆

人権考――心開くとき――』

産経新聞大阪本社人権問題取材班編

解放出版社1994年初版発行 1800円+税

☆☆☆☆☆

  

27年も前に出版された本だが、今読んでも強く迫ってくる。

20代の若い記者たちが中心になって、熱心に取材し執筆している。人権の専門家ではないから既成の枠にとらわれることがなく、真剣な若者たちだから社会を生きる中で「何故だ」と感じる自分自身に忠実に、かつ正直に書かれている。

だから、読んでいて新鮮であり、時代が変化しても訴える力がある。真実を明らかにするという視点からも、勢いがある。

空気を読んで、人の顔色をうかがっていなければ生きていけない現代では、決して触れられることのない内容もたくさん書かれている。今なら同じことに気付いても、思わぬ波及が気になって書けないだろうと思われる。

時代の変化を考えると、今を知るためにこそ、この27年前に書かれたものを読んで未来をイメージする必要がある。この本は、そんなことを考えさせる。

 

メデイアが触れてこなかった事実を、これでもかと気付かせてくれて驚くばかりだが、思い出すまま一部を挙げてみよう。

 

                731部隊による人体実験被害者遺族が、直接見た事実を証言している。何故、戦争犯罪をいつまでも隠すのか。

                朝鮮半島出身者が帰還するために、急きょ用意されたのが浮島丸だった。その浮島丸沈没の原因はなお不明とされる。報道すらされない。そのこと自体が重大な歴史的事実である。

                八重山のマラリア多発地帯に、住民が強制疎開させられ、大勢がマラリアで死んだ。この事実をなぜきちんと見つめないのか?

                従軍慰安婦問題の加害者側である日本人が、実名で謝罪を続けている。実行した本人が「慰安婦狩りを自分で実行してきた」と証言している。これが何故報道されないのか。

                第2次大戦中の米国で、日系人は強制収用されたが、同じ敵対国出身であるはずのドイツ系やイタリア系の人たちが収容されることはなかった。この違いの重大な意味を検討されたことはあったのか。

                日本人妊婦の流産経験率は、全妊婦で1.7%、教職員の場合8%、養護教員では11%。こんな重大事が問題にされない。

                夫婦別姓が認められない国は、世界でもまれである。日本はそのまれな国なのだ。

                92年のバルセロナオリンピックの性別検査で、女子選手のうち5名が、男子を示すとされているXY染色体を持っていた。性別検査はいったい誰のためにやっているのか。

 

 

さて、27年前の若手記者たちの見事な仕事に感動しながらも、今の若者たちは、何を感じ何をやろうとしているのだろうかと考えた。

この本を読んでいるとき、世界は新型ウイルスのパンデミックで大混乱していた。

そんな中で、ミャンマーでは国軍がクーデターを起こし、反対するデモ隊に国軍が発砲して多数の犠牲者を出していると報道された。

香港では、少し前までデモ隊と治安部隊とが衝突をくり返していた。イエメンでは内戦が続いている。シリアでは相変わらず難民を出し続けている。中南米やアフリカ、中近東は、いつも政情不安で常に庶民が犠牲になっている。米国政府とメディアは、中国当局のウイグル人に対する人権弾圧を非難している。

世界の緊迫した事態に対し、きっと多くの若者たちが何とかしなければならない、何かできることはないかと考えているだろうと思っていると、ギョッとするニュースが報道された。

パリで若者たちが、気候変動の危機を訴え、大規模デモをやったというのだ。

若者たちは、CO2排出制限、温暖化阻止のために過激な活動を展開し、世界に呼びかけた。世界中の若者たちが呼応して活動を展開しているという。

若者たちや家族がCO2を吸わされて体調を悪くしたのだろうか。切迫感も生活感もまるでない。

国連の気候変動に関する報告書を活動の根拠としており、このままでは10年後には地球が大変なことになる。だから今が分かれ目だ。すぐに対応しなければならないと主張している。

国連報告書の真偽については、人によって意見が分かれるだろうが、国際機関や国連はウソばかりついてきた事実を忘れないでもらいたい。

パリの若者たちは、生活に危機感はなく、他に深刻な不満や課題がないようだ。植民地主義時代以降の西欧中心の特権的枠組みからいつまでも抜け出せないのだろう。

国際的権威の言うことを疑いもせず信じ込み、すぐさま行動に移す。まるで西欧民主主義で飼育された優等生のようだ。自分で世界を見つめ、自分で考えることを放棄している。常識や権威を疑ったり、自分で調べることもない。

単に、注目されたい、有名になりたい、という願望を満たしたいだけなのではないのか。他に目的が感じられない。

彼らは発展途上国に対し「欧米先進国を見本とし、マネをして発展を目指せ」と言っておきながら、何ら反省することもなく急にCO2排出はダメだと言い出したのである。

日本にもこういう若者たちはたくさんいる。

ぜひこの本を読んでもらいたい。この本を書いた若い記者たちは、注目されたいという理由だけでデモをやる若者たちとは、対極にある

 

 

 この本の続編が1998年に出版されている。

 『しあわせの温度――続人権考

産経新聞大阪本社人権問題取材班編

解放出版社1998年 2000円+税

 

1弾では触れられなかった、在日韓国朝鮮人差別、障がい者差別と社会参加、震災遺児、沖縄差別、被差別部落、中国残留孤児などの問題を取り上げ、当事者に密着取材して報告をまとめている。

1弾同様、身近な問題として感じ、勢いがあって新鮮だ。これまで知らないでいたことに驚くことばかりで、とても勉強になる。


N


いま注目!»»»こんな本があります»»»




関連記事

Keyword : 人権考 心開くとき 産経新聞大阪本社 差別 偏見 しあわせの温度 気候変動 CO2 若手記者 パリ

コメントの投稿

Secret

プロフィール

うさぎもかめも

Author:うさぎもかめも
~~~~~~~~~~~~
うさぎもかめも、
白鳥もアヒルも、
コブタもオオカミも、
桃太郎も犬も猿も雉も鬼も、
若者も高齢者も
障害のある人もない人も、
誰もが参加し、誰もが輝く場をつくります。
~~~~~~~~~~~~~
このブログは
一般社団法人スローテンポ協会
が運営します。

»»»記事一覧»»» 
いま注目!
»»»こんな本があります»»»
~~~~~~~~~~~~~

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR