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「なんで洞窟に壁画を描いたの?」五十嵐ジャンヌ☆☆☆☆★

   なんで洞窟に壁画を描いたの?

        美術のはじまりを探る旅                

  五十嵐ジャンヌ 著 新泉社 2021年 2,000+

  ☆☆☆☆★


 この本を読むと、主人公と一緒に洞窟壁画探検を体験したかのような感覚になる。それは、冒頭に掲載された本物の洞窟壁画の写真や物語りの展開にもよるだろう。

 この本の主人公は中学1年生の女の子。学校の部活で歴史部部員に入っている.。彼女の祖父は、高校の世界史の元教師で、いつも彼女の謎ときのヒントをくれる存在だから、その影響が大きい。ヒントのタイミングが実によいし、祖父と孫との会話が、洞窟壁画というかた苦しい世界をやさしくしてくれる。


 さて、物語は、上野の国立科学博物館で開催された「ラスコー展」から始まる。

 展示空間の中央には、実際のラスコー洞窟の十分の一模型と、その周囲には洞窟内で発見された石器などがあり、その頃の人を再現した人形も展示してあった。

 この「ラスコー展」を見学したとき、彼女は「なんで洞窟に壁画を描いたのだろう?」と疑問を抱いた。祖父と、祖父の教え子の研究者も交えて、3人の対話がくりかえされ、そして春休みの3人のフランス旅行が決まった。

 旅行の目的は、ラスコー洞窟、フォン・ドゥ・ゴーム洞窟、ルフィニャック洞窟の見学だが、パリ観光もする。この本のフランス旅行を案内する部分は、読者を一緒に旅行している気分にさせてくれる。

 パリでは最後に、人類博物館を見学する。そこにあった、初期人類に関する展示室で、「わたしたち現生人類のホモ・サピエンスは、20万年前に北アフリカで誕生した」と説明を受けた。

 人類は初期人類から現生人類まで、誕生・絶滅のくり返しを続けて、今の私たちが残った。彼女は、多くの疑問で頭がいっぱいになった。そしてスマホに「人間って何?」「絵を描いたのはホモ・サピエンスだけ?」とメモをした。


 フランス旅行から帰国すると、中学2年生の新学期が始まった。歴史部では、秋の文化祭での発表についての話し合いがあった。発表の順番がたまたま彼女だったので、「美術のはじまり」をテーマと決め、洞窟壁画旅行の話を発表することにした。

 いろいろ湧き上がった疑問の中から、「いつから美術はあるんだろう?」「なんで人間だけが美術を製作しているのか?」「「人間てなんだろう?」という哲学的なテーマに挑戦することになった。

 彼女は、見て、聞いて、考えて、パズルを組み立てるような長い過程を経て、疑問を解いていく。そして、発表会に臨んだ。


 さて、私たちは、洞窟壁画から何を学ぶのだろう。この本は、未知のことを知ろうとするエネルギーが、人間の想像力や思考能力を高める、と教えてくれる。

 さらに、壁画を通じてその年代に生きた人びとの工夫や考え方が、次の世代に伝えられ、それがくり返されて現代に伝授されてきたことを教えようとする。

 20万年前に北アフリカで生きた人たちは、現代人の歩きスマホを見たらどう思うだろうか。この本は、現代の私たちの当たり前の日常の意味を改めて考えさせてくれた。

 気になるのは、中学1年生がこんな専門的なことに夢中になるなど、話ができ過ぎている点だ。旧石器時代に関心を抱くのは、著者自身も大学生になってからだった。


いつか七味


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