FC2ブログ

『身の回りから人権を考える80のヒント』 武部康広著 「やさしさ」とは何だろうを考えた☆☆☆☆

『身の回りから人権を考える80のヒント』

武部康広著 解放出版社 2020年 1600円+税

☆☆☆☆

「やさしさ」とは何だろうを考えた

 

JA滋賀の役員向けに発行してきた機関紙に、人権啓発担当である著者が、10年にわたり記事を書き続けてきた。その中から80作を選んだのがこの本である。

スローテンポ通信のバックナンバー集のようなものだと思えばよい。

タイトルにある「人権」という言葉は、どうしても権利を主張するような響きがあっていただけない。文部省推薦図書のように、押し付けがましいのだろうと思ったが、読んでみると全く違った。

内容のある文章が多い。それでいて、どの記事も心地よい。後味がよいので、読後はさわやかな気分になれる。

なぜだろうかと考えた。誰に対してもやさしいからではないだろうかと思った。そこで改めて、「やさしさ」とは何だろうか、を考えてみた。

 

完璧で強い人に対して、「やさしさ」を求められることはあまりない。「やさしさ」の対象は、決まって困っている人、弱い人である。それで、「やさしさ」とは、弱者に対する思いやりのことではないかと考えた。

ここでいう弱者とは、障がい者、高齢者、子ども、失業者などの経済弱者、地震、台風などの災害被害者、戦争被害者、経済難民、政治難民、いわれのない差別に苦しむマイノリティーや社会的弱者など、困っている人たちのことだと考えればよいだろう。

しかし、確かに、億万長者や皇帝陛下に対して「やさしさ」が求められることはないが、トランプ、プーチン、周近平やカルロス・ゴーンといえども、孤立して一人で悩むときは「やさしさ」を求める。

また、リッチな人であっても、見知らぬ土地を訪れて迷子になったときなどは、「やさしさ」を求める。

ということは、「やさしさ」とは、常態的な弱者に限ったものではなく、そのときその場で、困っている人に声をかけたり、同情したり、力になったりして、困難を分かち合うことではないだろうか。

 

「やさしさ」の第一歩は、気付くことであり、それも「やさしさ」に含まれる。

競争社会は人から余裕を奪う。余裕がなければ「やさしさ」をなくす。

なぜなら、余裕がなければ気付かないし、偶然気付いても、余裕がなければ関わろうとしない。余裕がなければ、他者への思いやりも生まれない。

ということは、余裕が「やさしさ」の前提にある。余裕とは「ゆとり」といってもよい。経済的「ゆとり」だけでなく精神的「ゆとり」も含まれる。

経済的「ゆとり」は、財産や稼ぎで決まるが、精神的「ゆとり」の大小は、経済力とは無関係に、当人の人間性や価値感、人と人との関係をどうとらえるかなどによって決まる。それは理解力や想像力にもつながる。

価値観や想像力などは生まれながらあるものではなく、人から学んだり影響を受けて育っていく。だから「やさしさ」とは、人によって育てられるものである。

やさしい人間になるには、やさしい人たちと暮らすことだ。それができないときは、やさしい人が書いた本を読めばよい。そういう意味で、この本はおすすめだ。

 

一言だけ追加したい。

「やさしさ」への無条件の礼賛には注意が必要である。

 「やさしくする」と「あまやかす」は別ものである。やさしくされれば、誰でも心地よい。「やさしさ」を無条件に良いものだと勘違いして、子どもが欲するものをただ与えるだけではあまやかすことになる。

人の世は、努力して望みを達成するものだ。努力しても思い通りにならないこともある。そんなときこそ考える。考えるから、世の中を理解したり、また別の道を探したりする。

努力もさせずあまやかして育てると、学びのチャンスを奪ってしまい、軟弱になり少しの試練にも挫折してしまう大人になってしまう。

また、詐欺師や悪徳業者は、「やさしさ」を武器に消費者をだます。だますほうが悪いのか、だまされるほうが悪いのか。議論はつきないが、一つ言えることは、これは社会がやさしくないからである。

本当の「やさしさ」とは、その場限りの表面的な「やさしさ」ではなく、相手の将来も見すえて相手を思いやるものでなければならない。

 

「やさしさ」にあふれるこの本が、「やさしさ」を考える契機を与えてくれた。本の表題を「やさしさとは何か」に変えたほうが売れるのではないだろうか。

 

»»»こんな本があります»»»


 

関連記事

Keyword : 『身の回りから人権を考える80のヒント』 武部康広 やさしさとは何か ゆとり 弱者 あまやかす

コメントの投稿

Secret

プロフィール

うさぎもかめも

Author:うさぎもかめも
~~~~~~~~~~~~
うさぎもかめも、
白鳥もアヒルも、
コブタもオオカミも、
桃太郎も犬も猿も雉も鬼も、
若者も高齢者も
障害のある人もない人も、
誰もが参加し、誰もが輝く場をつくります。
~~~~~~~~~~~~~
このブログは
一般社団法人スローテンポ協会
が運営します。

»»»記事一覧»»» 
いま注目!
»»»こんな本があります»»»
~~~~~~~~~~~~~

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR