ブルガリアのごはん 絵本世界の食事21 ☆☆☆☆
絵本世界の食事21
農文協 2020年 2,500円+税
☆☆☆☆
ブルガリアはバルカン半島の北東部に位置します。ギリシャ、トルコ、ルーマニアなどと接し、東には黒海が広がっています。面積は日本の約4分の1ほどで、北海道よりやや広いくらいです。
緯度は日本より北にあって、内陸部の冬は寒さが厳しいのですが、黒海沿岸地方の夏は高温多湿になります。文明の十字路にあって、昔から様々な文化が入ってきました。地域ごとに羊や豚などの畜産業や、小麦、野菜などの農業が盛んです。
食文化は、イスラム文化の影響を受けながらも、キリスト教の国ということで豚肉料理が多いようです。畜産が盛んなので豊富な乳製品が様々な料理に使われています。
毎年短い夏には、人々は仕事を休んで人気のリゾート地で過ごします。黒海には大きな海水浴場があり短い夏を楽しみます。
魚貝類が豊富で、小さな商店で獲れたての魚をフライにして売っています。黒海ではムール貝が名物で、コース料理をだすレストランが多く見られます。遠くにいつも大きな貨物船が見え、外国との交易も盛んです。
ブルガリアの一般の人々はどのような食生活をしているのでしょうか。この本では、黒海沿岸の郊外に暮らす両親と子供2人の家族をのぞきます。その一部を紹介しましょう。
一家の朝は大いそがしです。朝7時に子供達の学校が始まるからです。お父さんと子供たちは、学校に送る途中のパン屋で、一緒に朝ごはんを食べます。
よく食べるのは、バニツァというパイ生地にいろんな具を入れて焼き上げたものです。具はホウレンソウ、タマネギ、チーズ、卵などがあり、いろいろあるので食べ飽きることはありません。バニツァは家庭でもよくつくられ、季節によっても家庭によっても具に違いがあります。
お母さんは、誰からも邪魔されず朝からテキパキと洗濯や掃除を済ませ、通勤途中のカフェで、ローストビーフサンドとコーヒーで朝食をとって出勤します。
ブルガリアの多くの学校では、給食がありません。午前の部では、10時頃に20分の休み時間があり、子供たちは学校から出るおやつを食べます。学校の始まりが早いのでお腹がへるだろうという学校側の配慮です。午後の部の子には、おやつは出ません。午前の部と午後の部は、不公平にならないように学期や月ごとの交代制になっています。
午前の部の授業が午後1時頃に終ると、子どもたちは学校から直接祖父母の家に行き、お昼ごはんを食べます。夕方に、お父さんとお母さんが迎えに来るまで祖父母と過ごします。ブルガリアでは、こんな家庭が多いようです。
お昼ごはんは、野菜サラダとスープが定番で、食卓には必ずパンがあります。大人は昼でも食前酒を飲み、子供はジュースを飲みます。食卓の中央にはお肉屋さんが作った豚肉のソーセージがあり、各自に配られた豆のスープと共にいただきます。
豚肉をハーブとスパイスで風味付けし、それを羊の腸に詰め込んで蒸したソーセージは肉屋の人気商品となっています。
夕方帰宅すると、家族そろって夕食です。
最初にサラダを食べます。トマト・キュウリ・タマネギ・トウガラシ・パセリ等を塩とオリーブオイルで味付けし、食べる直前にヨーグルトドレッシングをかけ、ヤギの乳で作る白チーズをふりかけて食べます。
サラダの次は、温かい料理です。鶏肉の煮込み料理が人気です。
ブルガリアではミルクが大切な食材です。ところがミルクは腐りやすく保存ができません。ヨーグルトやチーズにすることで保存が出来るのです。 乳製品がなかったら、ブルガリア料理は成り立ちません。日本ではヨーグルトはデザートですが、ブルガリアでは料理の材料や調味料です。
この絵本を見ていると、ブルガリアの人々が、歴史に翻弄されながらも伝統食を大切に守ってきたことがわかります。じゃあ、日本人はどうでしょう?
和食と言っても、コンビニの弁当やコンビ二おにぎりも和食です。和食というあやふやな言葉と経済優先の掛け声によって、最近まで引き継がれてきた伝統食がないがしろにされています。
儲け主義企業の味にならされる若者達の将来が心配です。ブルガリアにならって、いいものは世代を越えて引き継ごうではありませんか。
たべものがかり
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