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『コンゴ共和国 マルミミゾウとホタルの行き交う森から』増補改訂版 西原智昭☆☆☆☆☆

コンゴ共和国 

 マルミミゾウとホタルの行き交う森から』

 増補改訂版

  西原智昭

  現代書館 2020年 2300円+税

  ☆☆☆☆☆

 

著者は、30年間コンゴ共和国の熱帯林で、狩猟採集民やゴリラたちと生活をともにしながら、野生生物の調査研究と熱帯林保全に取り組んできた。国際野生生物保全NGOの現地スタッフとなってからは、人、もの、機材や国境を越えるなど調査規模が拡大し、さらに精力的に活動を展開してきた。

2年前の初版に、新たに第12章 さらに隠蔽される“真実”を追加して改訂版となった。

 

この本の最大の特徴は、何よりも言っていることが正直で、世間に迎合しないところにある。改訂版ではその姿勢がより一層際立ち、読んでいて共感が深まった。

例えばこんな部分がある。著者が帰国後、日本の大学院生の取り組みに対して「いったいそれで君は何をやりたいのか」と質問すると答えが返ってこない。さらに質問すると、しゅんとなってしまう。泣いてしまう者までいる。

ゼミで発表中の大学院生に質問したら、参加していた指導教官が代わりに答える。「あなたに聞いているのではない」と怒鳴ったら、ゼミ全体がシーンとなった。指導教官は「若者はすぐに意気消沈するから、励ます方向で言ってほしい」と批判する。

それに対し著者は「アホか! 大学院は幼稚園や小学校か」と書いている。

 

これは、この本における著者の一貫した主張に通じる。

よくある動物愛護、復興支援、環境保護などの活動は、わかりやすい言葉で誰でもとびつきやすいように工夫がしてあり、とびついたらすぐに達成感を感じ満足するよう仕組まれている。そうでもしなければ、人は集まらない。

人は他人事に関心はなく、おとく情報探しで忙しい。主張することなく、空気を読んで周囲に合わせる。質問されれば笑顔で無難に答えるだけ。何かに疑問を感じることもなく自ら積極的に知ろうとはしない。

学校も親も社会も、そのような人々を幼稚園生か小学生のように扱い、形だけでも社会へ参加させようとする。メディアもそれに加担する。現代社会はそうやって人々から自分で考える機会を奪っている。それはたいてい巨大資本の利益につながっている。

少しでも関心を抱けば疑問が出てくるはずだ。

印鑑や三味線のバチに使われるのは、マルミミゾウの象牙である。マルミミゾウを絶滅の危機から救うために象牙取引が禁止された。にも関らず、マルミミゾウは減り続けている。

禁止されると在庫の価格はつり上がる。すると密猟者が出てくる。直接猟をするのは現地の貧しい人たちだから、密猟者を捕らえてもすぐにまた現れる。流通経路も複雑に出来上がっている。禁止以前の在庫に張りつけるための国際認証マークはすぐに偽造されるし、何の意味もなくなっている。

 

どうすればいいのか。

著者は主張する。

保全とは動物や植物が相手ではない。人間が相手である! 特に象牙を買って喜んでいる無知な日本人が相手なのである。

もっとも簡単な方法は、誰も象牙製品を買わなくなることだ。象牙が売れなくなれば密漁はなくなる。貴族趣味の金持ちが象牙の印鑑を自慢していたら、無知で悪趣味の成金だとして軽蔑するがよい。

密漁で生活している人が困るのではないか、といった心配は無用だ。現地の貧困は、ヨーロッパ人が侵入してから始まった。野蛮なヨーロッパ文化に汚染されるまでは、豊かな文化を持ち平和にくらしていた。介入がなければ、自分たちでやっていく。

貧困も政治腐敗もテロも紛争も、全てヨーロッパ人がもたらしたものだ。病気もそうだ。

エボラ出血熱の人への感染は、熱帯林破壊でコウモリの体液との接触の機会が増えてゴリラに感染し、ゴリラから人へ感染したと考えられる。近頃は、アジア人までがヨーロッパ文化に汚染され、新たな雇用を産むといって巨大プランテーション開発などで熱帯林を破壊している。

新型コロナの感染拡大もその延長線にある。

 

この本が扱うテーマは、幸せとは何かから始まり人類学、社会、教育、メディア、戦争、政治などまで及び、とてつもなく広範囲に及ぶ。既存のジャンルを超え説明が困難なので、せめて何を扱っているかが少しでもわかるように、キーワードを拾って並べてみる。

野生生物の悲惨な実態、ゴリラが歌う、森の中で生きる森の先住民、リンガラ語、コンゴ人研究者、内戦、アイヌ、教育とメディアの課題、隠蔽される真実、ツーリズム、鯨食は日本の伝統文化か、動物園の意味、水族館でのイルカショーとイルカの捕殺、研究者のあり方、人類学と音楽、気象変動、「不都合な真実」を説く人にとっての「不都合な真実」、・・・、まだまだ出てくるが、ここらでやめよう。

 

さあ、この本は、あなたのおどろきを待っている。


N


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