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『ドキュメント 精神鑑定』[新版] 佐藤友之著☆☆☆☆☆

ドキュメント 精神鑑定[新版]

佐藤友之

現代書館 1993年 2300円+税

☆☆☆☆☆

 

 

 1979に批評社から出版された『ドキュメント 精神鑑定』の新版である。この本が指摘する現実は今も変わっていない。むしろ、40年前にはっきりと指摘されていた日本の恥ずかしい現実に対して、見向きもせず放置してきたのが我々日本人だったのだ。そういう意味では、何ともなさけない日本の現実をあらわにしたともいえる。

 

 精神科医療におけるベッド数の多さ、入院期間の長さ、薬物に依存する体質、閉鎖病棟、措置入院の多さなどなど、海外からも国際機関からも批判され続けているにもかかわらず、一向に改善がない。それについて指摘する本は、たくさんあるが、この本はその決定打といえるだろう。

 日本の精神科医療は矛盾だらけだが、それは、好奇心を働かせれば少しは想像できるというものばかりではない。一般には知られようのないところでとんでもない役割を果たしてきた。それが精神鑑定である。

 犯罪精神医学は、生育暦、家族暦、社会遍歴、近隣のうわさなどを頼りに、犯罪を犯す傾向にある人間かどうかを判断する学問領域である。

 第1次大戦後のドイツに生まれ、ホロコーストにも大きな役割を果たした。人の心の動きが精神医学でわかるはずがない。ドイツではすでに否定されているが、日本ではなお精神鑑定の世界に生きている。

大戦前にドイツで学んだグループが、日本でこの領域を築き上げた。彼らは、戦前、戦後を通じて、精神鑑定に大いに関与した。

 この本は、阿部定(あべさだ)事件、帝銀事件など、誰でも知っている事件の裏側を暴き出すが、中でもライシャワー刺傷事件に関しては、報道の矛盾に気付かないまま日常を過ごしてきた日本社会に驚くばかりである。

19歳の少年に対し、捜査当局は起訴前に精神鑑定をやり、精神分裂病のレッテルを貼り付けた。そして、公開の裁判に持ち込むことなく、精神病院に送り込んだ。

 俗に言う「起訴前鑑定」は捜査当局が鑑定人を選定する。起訴されなければ、鑑定結果は公にはならない。弁護人も裁判所も口を挟むことはできない。

少年は、不起訴処分の後松沢病院に入れられ、7年後に病院内で自殺している。果たして読者は、鑑定医の診断や、「起訴前鑑定」の制度に納得できるだろうか。

この事件を契機に、「精神異常者は犯罪を犯すかもしれない。それを放置しておいてよいのか!」と叫ばれ始め、保安処分措置入院の制度が整い、精神科病棟が一挙に増やされた。

さあ、この本は、どれだけあなたを驚かせることだろう。


N

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