『エチオピアのごはん 』☆☆☆☆
絵本世界の食事22
農文協 2020年 定価2500円+税
☆☆☆☆
エチオピアは高地にあって過ごしやすく、自給自足が成り立っています。この絵本が伝えるのは、エチオピアの自給自足と伝統文化です。
アフリカのほとんどの国は、ヨーロッパの植民地にされましたが、エチオピアは例外的です。ヨーロッパからの干渉はありましたが、巧みな交渉でなんとか独立を守り抜きました。それができたのは、エチオピアには生活に必要なものはあっても、ヨーロッパ人が欲しがるような宝ものがなかったからだと思います。
エチオピアという国は、昔からの伝統を大切にし、独自の文化を育んできた国です。そんなエチオピアは、全てがアフリカでは例外的です。現在のエチオピアで、人々はどのような食生活をしているのでしょうか。
エチオピアの朝は、お母さんの煎るコーヒー豆の香りで、大人も子供も目を覚まします。生の豆をフライパンで煎り、鉢で砕きます。それをポットに入れて煮出し、それを一人一人に注ぎます。子供は甘くしたホットミルクを飲みます。
朝ごはんはキッタを食べます。キッタとは小麦を主体に焼いたクレープです。簡単に作ったおかずを包んで食べます。
エチオピア人は食べるときに右手を使います。ヨーロッパの植民地にならなかったおかげで、手で食べるという伝統が守られました。
朝食のあと男達は仕事にでかけ、子供達は学校に行きます。エチオピアの学校は、朝の部と昼の部の2部制です。絵本に紹介されている子供達は、朝の部なのでお昼に帰ってきます。
お父さん抜きでお昼ご飯のインジェラを食べます。インジェラとはイネ科の穀物から作る直径50センチもある巨大なピザ生地のようなパンです。お父さんは町の食堂でインジェラを食べます。
インジェラは国民食と言っても過言ではなく、エチオピアでは大切な主食です。おかずは、スパイスのきいた野菜や肉などをすり合わせたものが定番です。インジェラの上におかずを乗せ、それを手で巻いてちぎって食べます。
インジェラと朝食のキッタはまとめて焼き、作りおきをしておきます。おかずは、飽きがこないように朝、昼、夜とでは違うものを作ります。
エチオピア文化の一つに、若い女性が主催する「コーヒーセレモニー」があります。エチオピア人にとっては大切な慣習です。 その模様を紹介しましょう。
お客を招くときは掃除をし、良い匂いがする草を敷いておきます。それから、七輪に炭を入れて、甘い香りのする樹液をたきます。
客人が来てからフライパンでコーヒー豆を煎り、香りを楽しむために、その豆を皿に乗せ客に回します。その後、木の棒と鉢でコーヒー豆を砕き、粉にした豆を水の入った素焼きのポットに入れて火にかけます。
一人ずつの茶碗にコーヒーを注ぎ、最初はブラックで、あとは砂糖や岩塩、バターなどを入れて、それぞれの味を楽しみます。おつまみを食べながら3杯飲むのが礼儀となっています。おつまみはナッツを煎ったものが定番です。
さて、エチオピアの保健省は、新型コロナウイルスの感染状況を発表しました。2020年4月22日現在、エチオピアの累計感染者数は116名でした。感染者が低く抑えられているのは、、ヨーロッパ発のストレスの多い文明の影響がなかったことと、もう一つはエチオピアの伝統的な食生活とが考えられます。
たべもの係
○こんな本があります(リンク)
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