FC2ブログ

『父さんはどうしてヒトラーに投票したの?』☆☆☆☆☆★ 

父さんはどうしてヒトラーに投票したの?


文:ディディエ・デ二ンクス 絵:PEF 訳:湯川順夫、戦争ホーキの会

解放出版 エルくらぶ  2019年 1,800円+税

☆☆☆☆☆★          


 この本は、かつてドイツに起きた不幸な時代のお話ですが、一つのテーマを、小学生から大人まで一緒になって話し合えるようにできています。


 語り手は、主人公のぼくです。

 193335日は、国会議員選挙の投票日だった。その日のお昼すぎに、父さんと母さんが言い争った。ぼくはその日のことをはっきりと憶えてる。

  父さんが大きな声で言った。

「ヒトラーだけがドイツを救える。彼は全ての人に仕事を与えてくれた。われわれは、やっと祖国ドイツを誇りに思えるようになるんだ」

 母さんは言い返した。

「そうは思わないわ。私は自分の考えで投票する。でも、あなたに同じ選択を押し付けるつもりはないわ!」 

 そのあと、母さんはぼくに教えてくれた。

「この国の大人は、男も女もみんな同じ日に投票するのよ。こうやって、私たち国民は、国の大事な法律を決める国会議員を選ぶの」

 選挙の結果はナチス党が第一党となり、ヒトラーがベルリンで勝利の演説をした。このときドイツは、引き返せない道に一歩踏み込んでしまった。

 ヒトラーは、政党間の混乱の中で首相に就任し、翌年、大統領の死に伴って大統領を兼務することになり、総統となった。

 ヒトラーは、国民の不満を巧みに利用し、支持を拡大していった。

 反ユダヤ主義も、その一つだ。「ユダヤ人が富を独占し、われわれから、仕事をうばったのだ」と主張した。

 後に、ヒトラーは多くのユダヤ人をアウシュビッツ収容所に送り、ガス室で大量虐殺した。これをホロコーストと言う。

 選挙から3か月後、母さんが妹を産んだ。障害をもった女の子だった。

 当時のナチス政権は、障害児は政府が育てるとして収容した。ところが、親達がいったん子どもを手放すと、再び我が子を見ることはなかった。

 その話を聞いていたから、両親は森に住む友人に妹を預けた。


 1945年、ついにドイツは敗戦し、ナチス政権は崩壊した。

 戦争に行っていた父さんが帰ってきた。そして、ぼくは、がれきの中で聞いた。

父さんはどうしてヒトラーに投票したの?

 この質問で、この本はおわる。


 お父さんは、息子の質問には何も言えなかったのでしょう。

 そして、きっと、こう悔やんだに違いありません。

「一生懸命に考えて投票したのに、何故こんなことになってしまったのだろう。妻はヒトラーの口のうまさを見抜いていたのに、投票日の朝、どうして妻ともっと真剣に議論しなかったのだろう」

 この物語は、日本人にとって他人ごとではありません。

 大正デモクラシーを謳歌していた時代から、気が付いたら軍国主義が支配し、アジア太平洋戦争に突入していた。それは、皇帝を追放して誕生したワイマール共和国が、気が付いたらナチス帝国になっていたドイツとそっくりです。

 ドイツ人は歴史を振り返りますが、日本人は、忌まわしい歴史を封印しているのではないでしょうか。

 では、どうしたらいいのでしょうか。この絵本から、大きなヒントを得ました。

 歴史が変化するときに、不穏な動きに気が付いたのはお母さんでした。お母さんたちが、きちんと発言し、お父さんたちを説得できていたなら、この忌まわしい歴史は食い止められたかもしれません。

 そういう視点から、この本には一つ不満があります。お母さんが脇役に収まっていて、表舞台に登場しない点です。お母さんの思いや苦悩をもっと描いて欲しかったのに残念です。

 これからの日本は、女性たちのしっかりした発言が必要です。女性たちが、危ういと思ったらきちんと発言し、猛進する人たちを説得してほしいと思います。

 ドイツに起きた事を他人ごととせず、日本に置き換え議論すべきです。そのためにも本を読み、知識を深め、選挙に備えることが大切でしょう。


OG(大人になった餓鬼)


   ○こんな本があります


関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

うさぎもかめも

Author:うさぎもかめも
~~~~~~~~~~~~
うさぎもかめも、
白鳥もアヒルも、
コブタもオオカミも、
桃太郎も犬も猿も雉も鬼も、
若者も高齢者も
障害のある人もない人も、
誰もが参加し、誰もが輝く場をつくります。
~~~~~~~~~~~~~
このブログは
一般社団法人スローテンポ協会
が運営します。

»»»記事一覧»»» 
いま注目!
»»»こんな本があります»»»
~~~~~~~~~~~~~

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ