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『13坪の本屋の奇跡』木村元彦著☆☆☆★★

13坪の本屋の奇跡

「闘い、そしてつながる」隆祥館書店70年

木村元彦著 ころから2019年 1700円+税

☆☆☆★★

 

 すろーてんぽ書店も街中の13坪の本屋だ。この本から学ぶことは多いだろうと期待して読んだ。

 隆祥館書店は、親子2代の家族経営で70年にわたって維持されてきた。地域住民からも支持され、黒字経営が維持されてきた。素人集団が目標ばかり大きく掲げ、のんびりムードでオープンから3年赤字続きのすろーてんぽ書店とはまるで対照的だ。

 大手主導の配本システムは、見計らい配本や返本しても返金が先送りなど、何ごとも取り次ぎの算段で決まり、小さな本屋は、文句を言えば配本されないと恐れて黙って従うしかない。

この大手優遇の理不尽な配本システムでは小さな書店は立ち行かない。声をあげたのが隆祥館書店初代店主だった。

大手出版社や大手メディアですら気付かなかったこの実態を、広く知らしめた努力には敬意を表する。

 時代が変化し出版不況と言われるようになってからも、隆祥館書店は、発売日前にこれは売れるとにらんだ本を、大量確保して売りまくり、販売実績で数々の驚くべき数値を出して、出版社から一目置かれるようになる。発売の前から版元が出す情報を逐一チェックしているのだ。

 作家と読者の集いは、2011年に始まり2019年で240回を越えた。本の著者と読者とをつなぐためのもので、読者からも作家からも大きな支持を得ている。

詳細には書かれていないが、これらのための努力は、並大抵のものではないことは想像がつく。

 

だが、読み終えて疑問ばかりが残る。

今の時代は、いやしと共感ばかりが求められ、批判は読者から支持されない。だから、あえて厳しく批判する人はいなくなった。この本の著者も、批判的なことには努力して触れないのだろうと思えた。

そんな時代にあっても、文筆家が時代に迎合していたのでは主張する文筆家とは言えない。同じことは本屋にも言える。さらに言えば、本の批判をしなくなったことが、出版文化を退化させてしまった大きな原因だと思う。

本屋は人が営むものであり、感じたり思ったことを言うのが人である。そして、人と人とのコミュニケーションが社会をつくる。

そんな中で今の時代は、力のある者が弱いものを押えつけ、ものを言えないようにしている。配本システムの問題はその一つだ。主張する本屋は、そんな時代に挑戦する。

この本は、隆祥館書店はそのような本屋だと言いたいのだろうが、それが伝わってこない。

スローテンポ書店は、人と人とのコミュニケーションを大切にするから、批判もするし、他人の意見も聞く。そうやって人は成長するし、書店も成長する。

ここから多少厳しい話になるが、誤解があれば指摘してもらいたいし、反論があれば、言ってもらいたい。さらに考え、成長につなげたい。

 

まず、この本は特別な書店のたまたまの成功物語であって、美談として読むにはよいが、一般化することや、他の書店がモデルにすることはできない。小さな書店が隆祥館書店の真似をしても同じようにはいかない。

オープン時の時代背景や立地、家族構成や家族一人一人の思いなど、たまたまめぐり合わせた好ましい諸条件を、今の時代に追い求めることは不可能である。

立地がよければテナント料も桁違いに上がる。隆祥館書店は、戦後の混乱期に土地を確保できたからテナント料がいらない。黒字を維持できるのはそのためであろう。

父親が数十年にもわたって積み上げてきた努力があったからこそ、取次ぎや大手出版社にも少なからずの理解者が存在した。だから娘の新たな取り組みに対しても支援を受けることができた。新たにオープンした書店が、取次ぎや大手出版社に対して同じような支援を求められるはずがない。

 

人物や物事を評価する際に、主張内容や活動内容ではなく、大手というだけで、あるいは著名人というだけで美化するところはいただけない。一冊の本にまとめ多数の読者に読んでもらうなら、その内容に責任を持ってもらいたい。

 例えば、作家と読者の集いに登場する小出裕章さんは物理学者であって、放射線の人体影響については専門外である。

年寄りは、放射線の影響が小さいから被曝してもよい、などと主張しているが、そうした発言が、避災者たちの葛藤と分断を生み、政府や東電や、現状のままで変化がないのが好都合な人たちの思う壺となっている。

彼のペテンのような主張を表まで載せて細かく紹介しているが、反対意見について触れないのはおかしい。

 鎌田實さんは、穏やかでユーモアと思いやりがあるという印象で、一般にはとても評判がよい。

しかし、「がんばらない」と言ったかと思えば、風向きが変わると「「がんばらないけどあきらめない」と言い変えたりするなど、空気を読んで空気に合わせるという時代の優等生の代表といえるかもしれない。

著者と隆祥館書店は、志のある医療者は鎌田實さんを見習えといいたいのだろうか。

 

そしてこの本は、「ころから」という小さな出版社の発行であることを忘れてはならない。「ころから」は、大手取次ぎを利用しないで、配本についてはトランスビューの直取引代行を利用している。書籍流通の問題を取り上げながら、その問題に果敢に挑戦しているトランスビューを取り上げもせず無視するのは、大きな矛盾である。

書籍流通の問題に関しては、他にも様々な意見がありいろいろな挑戦がある。著者は、課題としてとりあげながら全容を見ていないか、そうでなければ逃げている。

 

著者が隆祥館書店の考えやポリシーを素直に紹介しているかどうかはわからないが、この本に描かれる隆祥館書店と著者に感ずるのは、一貫して力のあるものに頼る傾向である。力とは数であり、数とはカネである。力に依存することは、大手や有名人に依存することに他ならない。

隆祥館書店は、大手出版社と大手取次ぎばかりに依存し、そこからの情報を頼りに客に宣伝し大手出版社の本ばかりを売りまくる。作家との集いは、大手出版社から本を出した作家ばかり、それもすでに人気のある作家ばかり。著者はそれを素晴らしいとして紹介する。

本の帯に「忽ち3刷!」とあり、たくさん売れるほど良い本だと思っているのだろうか。トーハン元社長も「力作」「良書」と評価し推薦する。他にもクロワッサン、東京中日新聞、図書新聞、産経新聞が絶賛している。内容はどうでも、大手や有名人が誉めれば良い本なのだろうか。

日本には、数百の出版社が存在し、中小の出版社も懸命に本をつくっている。だが、小さな出版社というだけで、スゴイ本ができても本屋に並べてもらえない。

「理不尽な出版流通に声をあげて闘う本屋」を紹介する本としては、あまりにもお粗末である。

 

N


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Keyword : 13坪の本屋の奇跡 木村元彦 隆祥館書店 書籍流通 本屋 出版社 ころから

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