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本屋は変革者たちのたまり場になる

 

   『本屋がアジアをつなぐ 

        自由を支える者たち

  石橋毅史著 

  ころから(出版社) 2019年 1700円+税  

  ☆☆☆☆☆

 

著者は、『「本屋」は死なない』(新潮社)の著者であり、本屋が好きな人たちの間ではよく知られている。著者の本屋めぐりの旅は、今も変わることなく続けられている。

本屋めぐりは日本を越え、韓国、香港、台湾にまで向かった。そして、沖縄、東京へと戻り、本屋はそこで暮らす人々の自由を支えてきたと訴える。

本屋は変革者たちのたまり場だった。この本を読んで、そのことを改めて思い知った。

 もっとも印象に残るのは、1980年の韓国光州事件の立役者が、一つの本屋だったという話である。

書店主は、学生時代に民主化運動の活動家だった。卒業後、就職をあきらめ本屋を始めた。軍事政権下では、政権に批判的な本は販売が出来ず、持っているのが見つかっただけで刑務所に送られた。そんな中で、書店主は学生たちに発禁本を届け、学生たちは本屋に通い学んでいった。

光州事件のリーダーたちの理論的支柱をつくったのは本であり、その本を提供したのがこの書店主だった。

事件では軍が出動して学生たちを銃撃し、多数の犠牲者を出した。書店主が運よく生き残ったのは、すでに事件前日に逮捕、投獄されていたからだった。

光州事件は韓国の軍事政権が民主化に向かうきっかけとなった。この書店は今は存在しないが、光州市民なら誰でもその名前を知っているそうだ。著者はその書店主に直接会って取材している。

 

 今も神田にある内山書店は、東方書店と並んで中国関係の詳しい知識を得ようとする人にとってはなくてはならない本屋である。その内山書店が誕生したのは、日本が中国大陸に侵出する前であり、場所は東京ではなく上海だった。戦争中に日本に支店をつくったのが今もある内山書店の起源だ。

 上海内山書店は、中国人独立運動家たちを支援し、活動家たちは書店を活動拠点にした。その中には魯迅もいた。

 

本屋が時代を切り開く変革者たちの拠点になるなんて、今の時代にはありえないと思う人もいるだろう。現代社会は曲がりなりにも言論の自由がある。読みたい本を自由に読める。書店になくてもネット通販で自由に手に入れることができる。

ところが、よく考えてもらいたい。

調べものなどで必要に迫られて読む本は別として、本は、読み終えてはじめてその価値がわかる。少なくとも手にとって見なければ、読もうと思うまでには至らない。そこにこそ本屋が存在する理由がある。

 しかし、街に本屋がなくなっていく。書店は本を売ろうと必死だ。生き残りをかけ売れる本を並べる。そんな中で生き残るのは規模の優位性を活かせる大手書店ばかりだ。

 それに対して本好きは、「本屋に行っても売れ筋の本しか並んでいない。どの本屋も同じ本ばかりでまるで金太郎飴のようだ」となげく。

書籍の流通は、利益追求を求める大手出版社と流通業者が握っている。彼らは話題の人に出版させたり、大規模広告を仕掛けたりしてベストセラーをつくり出す。書評家や文学賞などを利用したりもする。

インターネットやスマホの普及によって当たり前のようにSNSが利用されると、人々は極端なまでに世間の流行を追い求めるようになった。テレビや新聞、雑誌も生き残るためにこのような流れを追う。学者や評論家たちも生き残りをかけ、世間の流れに追随する。

このようにして、社会の見方や考え方にまで流行が出来上がる。人々は、それが何者かによってつくられていることに気付かない。そしてみなが同じような考え方、感じ方になっていく。

 そして、流れに逆らう人を見つければ、よってたかって、「時代錯誤だ」、「世の中をわかっていない」などと言って攻撃する。

そこに言論の自由があるといえるだろうか。

「本離れが進んでいる」としきりに叫ばれるが、日本には未だ数百の小規模出版社が生き残っており、毎日地道に本づくりをやっている。そうしてつくられた本の中には、時代を鋭く見つめ、新しい時代を切り開こうとするものが沢山ある。

そして、現代社会の矛盾を何とかしたいと願う人たちがいて、良い本を届けようとする本屋が今も残っている。

だからいつの時代も、本屋は時代を切り開く変革者たちのたまり場となる。


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