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辛口書評

 

アジアの復権

 成長の文明か 共生の文明

  農文協人間選書258

  中屋敷 宏 著

農山漁村文化協会 2004年 1762円+税

 

 

近代」という時代と文明は、すでにその生命を終えた。世界は、環境問題と国際テロに苦悩し続ける。その苦悩から解放されるために著者は、「近代」をつくり上げたヨーロッパの底に流れる思想を点検し、アジアを見直すことで世界は変わる、と主張する。

近代」とは、ヨーロッパのプロテスタントが私的欲望の追求と富の蓄積を美化することから始まった。そこから、弱肉強食の植民地収奪の競争や、今世紀に至っても経済植民地戦争を展開する。「近代」とは、科学や技術をも収奪の武器にするという利己的なものだった。そして自然からも収奪し始めた。

アジアでは、もともと他民族どうしの貿易や交流が盛んであった。農耕が中心だから、自然と調和し、個人の欲望よりも家族や集落、コミュニティーの利益が優先された。そもそも収奪という発想がなかったから、西欧人にだまされ敗れた。

近代」という幻想によって思考が支配されないために、「知的に自立せよ」と著者は強調する。それは「いい本を読め」ということだと理解する。しかし・・・。

 

著者の言いたいことは、もっともで、よくわかるのだが、どうも、著者自身が西欧中心の思考方式で世界を見ているようである。

近代」というものをいかに批判的に見ようとしていても、その論拠は、「近代」をつくり上げた西欧哲学の巨人たちの引用から始まる。資本主義の成長の宿命、人間中心主義思想、社会契約論、経済成長と所得格差、グローバル資本主義、環境破壊、国家の変貌といった具合に、あくまでも西欧文明の視点から「近代」を見ている。

 

著者が主張するまでもなく、米国、イスラエル、フランスなどの西欧文明国が展開する「テロとの戦い」が、よい結果を招くとは、誰も思っていない。事実、「テロとの戦い」はますますテロを生んでいる。

「テロとの戦い」が正しいと信じているのは、西欧文明に未だ幻想を抱いている西欧人だけである。

また、自然環境を今も先頭に立って破壊し続けているのは、グローバル企業や西欧企業である。彼らは私欲のために、人類の未来など考えずどこまでも利益を追求する。

その早い者勝ちの分捕り合戦に、アジアの企業が遅れて参入すると、「自然破壊はけしからん」と言い始めたのである。

この本が書かれたのは、15年ほど前だから、世界の矛盾が今ほどはっきりとは見えなかったかもしれない。その点を考慮しても、批判すべきは批判したい。

著者は西欧対アジアの構図で世界を見るが、そこにアジアに対する思い入れや、わかりやすく言えば、えこひいきが存在する。アジア文明の優れた面は、もっともっと強調したいが、世界危機の問題とは別次元で考えるべきである。

武力統治による植民地時代から、現代の経済植民地の時代に至るまでを冷静に見るなら、収奪を正当化する西欧文明と、一方的に収奪される側のアジア、アフリカ、ラテンアメリカの文明という構図をしっかりと見る必要がある。

悲しいかな、現代の国際社会を主導しているのは、グローバル企業を代弁する米国など西欧列国である。彼らは企業が利益を追及することを後押し、国連を始め、世界フォーラムなどの国際会議を主導し、世界標準や世界の意思というものをつくり上げる。

そこに道理は通用しない。

国際テロの危機や環境破壊の危機、そこから逃れる方法は、アジアの復権などではない。単に「道理の回復」である。やるべきことは、「理不尽なことをするな」と主張することである。

N

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