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若者の未来は 高齢者の現在



散歩に出かけたときのことです。

お年寄り夫婦が私の前を歩いていました。おばあさんの前をおじいさんが押し車をつかみながら、チョコマカチョコマカと歩いています。

おじいさんの横でおばあさんが、「ほらっ、左!左!左の足をだすのよ」 と何度も号令をかけます。

リハビリなのでしょう。でも、その言い方が少しきつそうに聞こえたので、つい初対面のご夫婦に「お散歩ですか?」 と声をかけました。

おばあさんがこたえました。

「いえ、この先の整形外科医院に行くところです。」

200メートルほど先に整形外科医院の看板が見えました。私はご夫婦に歩調を合わせながら、ゆっくりとお話を聞いてみました。

ご夫婦は、おじいさんが86歳、おばあさんが82歳です。おじいさんが69歳になるまで二人とも働いていたそうです。退職した二人は、旅行の計画をたてて老後の生活を楽しみにしていました。

ところがその矢先、おじいさんが脳梗塞で倒れてしまいました。

1ケ月の入院と賢明なリハビリで、家の中では自由に動けるようになりましたが、外出したときは思いどおりにはいかないそうです。


そんな話を聞いて、私は人の人生の1ページを見たように思いました。病院が近づくにつれ、ちょっぴり寂しい気持ちになりながらお別れしました。そしていろいろと考えました。


 二人は懸命に働いてきたのに一方が脳梗塞におかされてしまった。大変なリハビリの次は高齢という現実が待っていた。子どもがいるけれど遠距離であてにはできない。奥さんも老老介護で疲れているようだ。二人は予想もしなかった困難を背負うことになった。

高齢化問題が取りざたされて久しくなります。一部の新聞は、団塊世代の存在が高齢化に拍車をかけるといって団塊世代に矛先を向け、これ以上長生きすると若ものに迷惑をかけると暗に主張しています。

テレビのバラエティー番組の多くは、高齢者は役に立たず社会に負担ばかりかけると教えます。

本当でしょうか? 若ものも社会も納得する高齢者の生き方はないでしょうか。


 高齢者には豊富な知恵と人生経験があります。身体の衰えという理由で、効率優先社会が排除してしまっただけなのです。活躍の場さえあれば能力を活かせます。

 高齢者が仕事をして活躍すれば、若者が見ます。若者は老後までの人生を視野に入れて生活設計が立てられるではありませんか。おまけに、自分はどのような社会に住みたいのかを考えさせてくれます。

 自分が高齢になったとき、高齢者を排除する社会に住みたいのか、高齢者が生き生きと活躍する社会に住みたいのかということです。


高齢者は若い人たちのお手本になればいいのです。長い人生の中で培ったことを、若い人たちに教えるのです。

散歩の老夫婦にも、自分たちにしかできない仕事がたくさんあります。例えば、自分たちが経験で学んだ脳梗塞についてのノウハウを、同じ病気と闘おうとする初心者たちに伝授するのはどうでしょう?

夫自身のリハビリの体験も貴重だし、介護する奥さんの微妙な気持ち変化も貴重です。次世代が学ぶべきことが沢山あるはずです。

ついでに、頑固者や過度なおせっかいを、若者たちは敬遠するという長年の経験も、次の世代に伝授すればよいのです。


そんなことを考えていて、田舎の母を思いだしました。

母は、結婚後70年間農家で鍛えられました。2年前に夫をみとり、今94歳になります。足腰は衰えても、草取りや野菜作りをまだまだ楽しんでいます。

夫が勤め人だったので、母は一人で農業に奮闘しました。農業は始めてでした。牛を飼って乳しぼりまでやり、その牛乳を農協に出荷していました。子牛を産ませ育てる仕事もやっていました。

養蚕を始めた頃は、蚕(かいこ)に食べさせる桑の葉採りに、子供たちまで駆り出されました。わが家の二部屋が蚕(かいこ)に占拠さたときは、子供だった私は恨めしく思いました。

晩年になって、母の兄弟たちが病に伏したときには、それぞれ一生懸命看病しました。特に妹や弟が癌に侵されたときの看病はつらそうでした。


 昨年まで私は介護の仕事をし、今は家庭菜園や庭仕事を楽しんでいるのは母の影響かもしれません。最近、私の娘が介護の職に就きました。

 人生の選択肢は人それぞれですが、自分が誰かのお手本になれたら嬉しいですね。高齢者の最も大切な仕事は、自らがお手本になって次世代を育てることだと思います。

今朝もテレビで見ました。政治家たちが答弁する姿を、子供たちが見て知らず知らずのうちに学んでいます。未来に生きる子供たちの良いお手本になってほしいものです。 

いつかS

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