突然のどしゃ降りに人の親切
突然のどしゃ降りに人の親切
車でスーパーに出かけたときのことです。買い物を終えて店先の玄関に立つと、外はまるで滝のような雨でした。テレビの天気予報では、各地で雷雨発生のようなことを言っていたのを思い出しました。
車まで走る人、折りたたみ傘を開く人もいる中で、子供連れの母親、老年の夫婦、そして私の3組がロビーに取り残されました。
見知らぬ客同士で、自然に言葉が交わされます。
「しばらく様子を見るしかないね」
「雨が止むまでどれぐらいかかるかしら?」
「ちょっと冷えてきましたね」
そのときでした。
「この傘を使ってください」 という声がしました。スーパーの店員が二人で、大きな傘をいくつも持ってきてくれたのです。
立ち往生していた3組は、それぞれ大きな傘を使わせてもらい、店員が客に付いてそれぞれの車まで順序よく回り、濡れた傘を回収してくれました。
帰宅した時、雨足は弱くなっていましたが、夕食の支度に間に合ったので、ふいに受けた親切がありがたくて、傘を持ってきてくれた店員さんの顔が目に浮かびました。
次の日、このことを職場の同僚に話しましたら、一人は「小規模スーパーだからできたんだね」と言っていました。私が行ったスーパーは、確かに小規模スーパーです。
さらに、もう一人の同僚は、スーパー側の事情も話してくれました。
その同僚が昔勤務していたスーパーでは、すでに20年ほど前には、お客様のために突然の雨対策をやっていたそうです。
玄関先に傘を置いて「どうぞ使ってください。使い終わったらここへお返しください。」 と案内していました。
安いビニール傘のない時代でしたから、今考えるより傘は高額です。突然の雨の後は、用意した150本ほどのうち1割くらいしか戻ってこなくて、いつも補充しなければならなかったそうです。
おまけに近くの駅から「お宅の傘が駅に捨てられている」 という苦情が何度も入ったそうです。傘には店名シールが張ってありました。
しばらくしてそのスーパーは、従業員が傘を持ってお客様を駐車場まで送っていくというやり方に変えたとのことでした。
スーパー側の事情があるにせよ、結果的には人と人とのふれあいが増えたのは良いことです。
私が傘体験をしたスーパーには顔なじみの店員さんがいます。私が栃木に引っ越してきた25年前は、下の子がまだ幼稚園でした。
その子を連れて、よくこのスーパーに買い物にでかけていました。その女性店員には、同じような子供がいたので時々話すようになりました。今でも店内で見かけるとお互いの子供の近況などを報告しあいます。
皆さんはスーパーでなにか困ったことはありませんか?商品の置いてある場所が見つからないときや商品のことを聞きたいときに、近くに店員さんがいると助かります。
昨今では、人件費削減のために無人化コンビニが試験的に導入されているようです。大手の工場では、人手を減らしてロボットが働いています。電車に乗ると、殆んどの人がスマホに夢中です。
囲碁や将棋までコンピューターにさせてしまったら、人は何に喜びを見つけ出すのでしょうか。本当にこんな世界でいいのかどうか、じっくり、ゆっくり考える必要があると思います。
機械ではなく、人が働き、人が活躍するようになってほしいものです。野菜たちは、太陽の光や雨、風にさらされて育つから、自然の恵みとなって台所にとどきます。人は、人のやさしさの中で育てばやさしい人になり、社会もやさしくなるでしょう。
1917.05.26 いつか七味唐辛子
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