スローテンポが心地よい社会をつくる
スローテンポが心地よい社会をつくる
スローテンポの反対は、ハイテンポかハイスピード、あるいは単にスピードです。
競争社会では、スピードが要求されます。個人であっても企業であっても、のんびり構えていたのでは、競争に敗れ落ちこぼれてしまいます。
競争社会のキーワードは効率とスピードです。この二つの言葉が生活全般を支配します。
企業は労働者に効率とスピードを求めます。時間内に速く効率よく仕事をやってもらおうとします。
働く人間は、決められた仕事を速く効率よくこなすために、まるでロボットのように手足を動かさなければなりません。工夫したり、考えたりしてはいけないのです。
外科医が手術をするときもスピードが求められますが、しかし、治療方針を決めるときは、スピードよりもじっくり検討する方が大切です。
スピードが求められるときもあるけれども、考える方が大切なときもあります。方向が定まらないときは、スピードよりも検討する時間が必要です。
混迷の時代だから、立ち止まって考えることが必要です。スピードを押し付けるのは、考えないようにさせるためです。振り込め詐欺や投資詐欺が相手を急がせるのは、考える隙を与えないためです。期間限定サービスやタイムセールなどもよく考えないで買わせるためのやり方です。
スローテンポが求められるのは、方針を決めるときだけではありません。
うさぎと亀が一緒に散歩するときは、うさぎは亀に合わせなければなりません。同じように障がいのある人たちや高齢者と共に暮らすときは、相手に合わせなければなりません。
全ての人が安心、安全、満足に暮らす共生社会では、スローテンポでなければならないのです。
まだまだあります。
散歩するとき、食事を楽しむとき、芸術を鑑賞するとき、恋人とデートをするときはスローテンポがいいに決まっています。楽しい仕事をやるときもゆっくり楽しみながらやるほうがよいのです。
同じ仕事をやるにしても、人によってやり方は異なります。ただ機械的にこなす人もいるし、工夫を凝らしながらする人もいます。 仕事の評価が効率とスピードだけなら、個性や芸術性、創意工夫も新発見も評価できません。
効率とスピードを求めると、仕事の遅い人を排除したくなります。そこに差別と偏見が生まれます。差別や偏見をなくすための第一歩が、スローテンポです。逆に言えば、スローテンポは多様性を認める共生社会の必須条件です。
(スローテンポ通信2017年3月31日号の記事より、少し編集して掲載)
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